前回のブログに引き続き、メタファシリテーション手法を紹介する。
メタファシリテーション手法の具体的手順と訓練方法について。
メタファシリテーション、その大原則である事実質問に関して知りたい方はこちら。
今回のブログもこの途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法を参考にする。貧困についての記述なども、とても参考になるので、現在もしくは今後、開発の現場に関わる方は一読することをおすすめする。
Contents
具体的手順
特定のプロジェクトがあるわけではないコミュニティ開発の隊員が、これから対象となる農村で、村人主体のプロジェクトの種を模索しているという想定してほしい。
- まずは相手の許可を取る意外と挨拶をした後すぐに質問に入りがちである。まずは自分の名を名乗り、許可を取る。こうすることで対等な関係を築きやすくなる。対等な関係でなければ、相手の本音を聞き出すことは困難になる。そういった意味でもこの入り方は重要である。
- セルエスティームが上がるようなエントリーポイントを見つけるセルフエスティームとは自尊感情のこと。わたしたちは、村人からすると公教育を受けた先進国から来た外部者である。どうしても優位な立場になってしまう。そこで、話しやすい状況を作り上げるために、セルフエスティームが上がるものから始める。わかりやすい例で言うと、大事そうにしてる持ち物など。
例:それは何ですか?買ったのですか、もらったのですか?それはいつですか?それはどこですか?など - 課題を整理するエントリーポイントを起点に事実質問を続け、村人が課題らしきものについて発言したのであれば、課題整理の手助けをする。それによって、どんな困ったことが起こったのかを事実質問を駆使しして尋ねていく。その際に、時間的に遡ったり進んだり時系列で聞いていくと進めやすい
例:一番最初に起こったのはいつかですか?どこで起きましたか?一番最近はいつでしたか?どこでしたか?
*もし、本当にそれが問題なのかという疑問がわいてきたら、「どんな対処をしてきたか?」さらに「それで誰がどのように困っているのか?」質問してみる。事実質問のおかげで当初問題だと思っていたことが、大した問題ではなかったと村人の気づきを促すことがある。本当にそれは問題ですか?と直接聞いてはいけない。なぜなら考えや思い込みを質問していることになるから。 - 解決方法を探るこれには主に2つあって、自己の類似体験を追跡する方法と、身近な他者の類似体験から学ぶ方法がある。例えば村の中に同じ課題を解決した例があれば、それを参考にすればよい。
例:以前にもそうしたことはありましたか?あればその時はどうしましたか?この村で同じような課題を持った人はいますか?など - 結論は絶対に当事者に言わせる。上記のやりとりをしていくうちに、その村の現実が見え、課題・解決方法の方向性が見えてきたとしても、結論は相手に言わせる。こちらが先に気づいても、言わせるように何とか事実質問をひたすら続けていくのである。こうすることで、村人が主体性をもって次の行動をとることができる。

訓練方法
本書の中にはいろいろと書いてあるが、下記2つに集約される。
観察と実践である。
他人の会話を観察する。その際に意識しなければならないのが、発言が下記3つの質問のうち、どれに当てはまるか。普段の会話で思い込みや考えを聞く質問が圧倒的に多いことがわかってくると同時に、数少ない事実質問に気づくようになると、自分でも意識してそれを使えるようになる。

習うより慣れろ!すなわち実践あるのみ。
開発の現場だけでなくて、友人や家族に付き合ってもらってもいい。自分一人でエントリーポイントを決めて事実質問を30個考えてみる、などでもいい。とにかく事実質問をすることと、その対話を客観的に観察しているもう一人の自分を意識しながら実践していく。
最初は具体的手順のようにうまくはいかないかもしれない。観察と実践を繰り返していくしかない。本書の中にもこう記載されている。
和田はこれだけのものをたった一人で築き上げた。中田は和田の真似をしながらやはり一人で基礎技能を磨いた。それを可能にしたのは一にも二にも情熱である。言い換えれば、途上国の人々の現実に必ずや直に触れるぞという執念であった。一人きりであっても、人生経験を豊かに重ねながら、執念を持って臨んでいれば、必ずや道は開けるはずである。
来週から自転車の使用が解禁になり、やっと農村を訪問できる。メタファシリテーション手法を実際に使ってみて、村人の気づきを促し、村人主体のプロジェクトを始めました!と早めにブログで紹介できるよう、今後も情熱をもって活動を続けていきたい。
それでは☆
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綿貫大地
1983年生まれ。千葉県成田市出身。
大学在学中にザンビアで半年間ボランティアをするNGOのプログラムに参加。
埼玉大学経済学部卒業後、サセックス大学開発学研究所(IDS)で開発学修士号取得。
大手商用車メーカーにて3年半勤務したのち、大阪の化学メーカーに2年半勤務。
2017年10月から2019年9月まで西アフリカのベナンで、青年海外協力隊隊員として活動。
JICA SHEPプロジェクトを用い、野菜農家グループの収入向上に貢献。
2019年10月からベナンの飲食店経営に従事し、現在はベナンの農業関連会社の起業準備中。
”だれもが志を持って生ける世界の創造”というビジョンを胸に日々活動中。
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