今回はメタファシリテーション手法を紹介する。
この手法を知ったのは、ある国際交流イベントにて、あるNGOのワークショップで紹介されていたのがきっかけ。その後も興味は続き、そのNGO主催のセミナーに参加したり、下記途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法を参考に理解を深めた。
今回お伝えすることは、ほぼこの本に書いてある。とても参考になる本なので、詳細を知りたい方は読んでみてほしい。(特にこれからコミュニティ開発で青年海外協力隊員になろうという方は必読ともいえる)
Contents
メタファシリテーション手法とは
メタファシリテーションという聞きなれない言葉だが、”メタ”と”ファシリテーション”に分けて考えると理解しやすい。
ファシリテーションの定義はいろいろあるが、この本では”気づきを促す(faclitate)こと”、としている。メタとは心理学用語のメタ認知からとったもので、メタ認知とは、以下を指す。
自分が何かを認知(理解)しようとしながら、同時にそういう自分自身を認知(理解)する行為や機能
よって、メタファシリテーション手法とは、対話を通して、対話をしている自分を客観的に捉えながら、相手の気づきを促進するコミュニケーションツールである。これが開発の現場で有用である。
具体的な方法は後述するが、大原則がこれ。
事実質問だけで構成する
*問題は何ですか?それはなぜだと思いますか?と決して聞いてはいけない
5W1Hのうち、When, Where, Who, Whatで構成すると質問しやすい
なぜ事実質問なのか
なぜですか?と聞いてはいけない理由
わたしたちは自分自身の問題の原因を分析する場合、自分の都合のいいように解釈したがる。つまりポジティブな出来事に関してはそれを内的要因に求め、ネガティブな出来事については外部環境や他者などの外部要因のせいにしたがる傾向がある。これらは私たちに元々備わっている自己防衛システムである。
よって、なぜですか?どうしてですか?と問われると、自分なりに都合よく解釈された原因分析を、もしくは事前に用意された言い訳を答えてしまう。
3つの質問とMのコミュニケーションの罠

①朝ごはんは何が好きですか⇒好み=感覚、感情
②朝ごはんはいつも何食べますか⇒思い込み、考え、意見
③朝ごはんは今日何を食べましたか⇒事実
質問は上記3つにカテゴリーされる。ここで注意すべきなのが、“いつも”や“普段”などがついた質問も事実質問ではないということ。
次にMのコミュニケーションの罠を紹介する。
机に下記のような文字のような数字のような図形のようなものが置いてある。Aの位置に座っている人がこれは何ですか?と尋ねると、それぞれこう答えた。
右側の人「数字の3でしょうか」
左側の人「アルファベットのEだと思います」
正面右側の人「アルファベットのWですね」
正面左側の人「いや、これはアルファベットのMではないでしょうか」
言うまでもなく、ここで起きていることは正面左側の人がAの位置から見たらこう見えるであろうという答えを自分の答えにしてしまっているということ。これをMのコミュニケーションの罠という。
この現象が開発の現場で頻発しているのである。
外部者が、上記3つの質問のうち感覚や思い込みを尋ねる質問をする。そして、問題の当事者が自分なりに解釈した思い込みや考えを、外部者に合わせて外部者が期待することを答える。
これでは、いつまでたっても現実の課題に辿り着くことはできない。だから、開発の現場で事実質問が求められるのである。
事実質問はさらなる特徴がある。
気づきを促し、オーナシップを引き出す
事実質問の受け手になって実感することでもあり、また聞き手が意識する必要があることだが、事実質問を続けていくと『受け手に考えさせるのではなく思い出させる』という行為に近くなってくる。
前述のように、人は自分の都合のいいように記憶し、自分の都合のいいことだけを思い出す傾向がある。あるいは、いつも決まったパターンでものごとを思い出す。事実質問で聞かれると自分なりの過去の解釈ではなく、事実に基づく回答を用意する。簡単な事実質問の連続は、そのパターンを破ることに一役買う。そこで受け手は違うパターンで思い出す。それが、気づきを促す。

そして、この自分自身で気づくことがオーナーシップを引き出す。言い換えると自分自身で気づかないとオーナーシップは形成されない。参加型開発の理念とされるのが当事者(開発を受ける側)が主体性をもってプロジェクト関わること(もしくはプロジェクトを進めていくこと)である。
しかし、当事者の主体性がなく、形だけの参加型開発が多くみられる。現実はこうだからこれが問題、そのためにはこの課題をクリアする必要がある、と自分自身で気づかない限り、そのプロジェクトは他人事、姿勢も受け身になってしまうのである。
私は海外の拠点を持つ会社員をして経験を持つが、業績がいい拠点をそうでない拠点を見分けるのは簡単で、一言でいうとオーナーシップがあるかどうか。すべてを『自分事』として捉えているかどうかの違いであった。
まとめ
開発の現場で事実質問を基本としたメタファシリテーション手法が必要な理由を私なりに解釈すると、
当事者(村人)が課題を明瞭に把握して、当事者自身の気づきを促し、当事者のプロジェクトに対するオーナーシップを引き出すため
次回ブログでメタファシリテーション手法の手順と練習方法を紹介する。
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綿貫大地
1983年生まれ。千葉県成田市出身。
大学在学中にザンビアで半年間ボランティアをするNGOのプログラムに参加。
埼玉大学経済学部卒業後、サセックス大学開発学研究所(IDS)で開発学修士号取得。
大手商用車メーカーにて3年半勤務したのち、大阪の化学メーカーに2年半勤務。
2017年10月から2019年9月まで西アフリカのベナンで、青年海外協力隊隊員として活動。
JICA SHEPプロジェクトを用い、野菜農家グループの収入向上に貢献。
2019年10月からベナンの飲食店経営に従事し、現在はベナンの農業関連会社の起業準備中。
”だれもが志を持って生ける世界の創造”というビジョンを胸に日々活動中。
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