こんにちは。前回記事の続きです。
本記事では、SHEPアプローチを使った実例と農家メンバーの声、そしてそこから得た学びを紹介していきます。
Contents
参加型ベースライン調査
目的
農家自身による現在の収支状況・保有資産を可視化し認識するための調査
実施方法
収支計算書・売上計算書・収穫カレンダーを農家自ら書き込んでいく。それらをこちらでエクセルで入力しなおし、全員に配布。

実際に書き込んでもらったもの
農家メンバーからの声
- 初めてきちんと収支を計算して利益がわかった
- 支出を細かく一つ一つ確認していくことで、どこにお金をかけすぎているのかが見えた
- 作物によって利益の差がこんなにあるとは思わなかった
学び
- 全員が読み書き&フランス語ができるわけではないので、まずキーパーソンたちに教え込んで、彼らから他メンバーをサポートしてもらうようにする形がベスト
- 当たり前を当たり前と思わない。私たちには見慣れている表一つでも、その表の見方がわからないメンバーもいる
- このプロジェクトの最終ゴールと、全4つのステップの中で今どのステップにいるのか必ず確認する。そうしないとただの作業になってしまう可能性がある
市場調査
目的
市場のニーズを把握、作物選定のための情報を把握するため。さらに、市場関係者を知る機会にもなる。
実施方法
農家自身が近隣の市場に足を運び、現場を視察し、小売り店や卸業者にアンケート調査を実施。全メンバーに参加してもらうために、3グループに分けて実施。



アンケート内容は、季節ごとの価格、求める野菜のクオリティ、輸送手段や支払い方法、どの町(もしくは国)から購入しているか、その他生産者側に要求したいこと、など。

農家メンバーからの声
- 新規顧客を開拓できた
- 供給がかなり不足していることが分かった(特に乾季)
- 季節ごとにこんなに価格のばらつきがあると思わなかった
- 今までは既定の袋に入れて出荷していたが、少量の場合キロ単位でも販売可能だと知った
- 多少状態が悪い作物は、今まで捨てていたが、その部分だけを取り除けば、売れることが分かった
- 一部の作物が輸送中に損傷していて、通常より安い価格で買い取られていた。今後は緩衝材を使用する
学び
最後の市場調査では、今まであまり目立たなかったメンバーも積極的にアンケート調査を実施。実際に自分たちだけで、市場調査をしてもらった結果、自信をつけ、さらにはこのプロジェクトのモチベーションも上がっているようでした。
また、もう一つの発見は聞き手側(小売り店や卸売業者)。
仕事中にアンケートとか嫌がる人もいるかもしれないな~と懸念していたのですが、実際はまったく逆でした。好意的な方がほとんどで、いろいろな情報を提供してくれました。彼らも生産者側とじっくり話すことができるこういった機会を探していたのかもしれません。
対象作物選定
市場調査の結果を基に、農家グループのメンバーが栽培する作物を選び、出荷時期等を決定
実施方法
市場調査で得た情報をみんなで共有し、各自一人一人が栽培作物とその出荷時期を決定します。そして、メンバー全員に選定理由と共に発表してもらいます。
現在、この市場調査の情報共有まで完了しています。近日中にメンバー全員からそれぞれの選定を発表してもらう予定です。
今後の流れと課題
今後の流れとしては、対象作物選定発表会を行い、後はその計画通りに栽培していくのみです。最終ゴールは彼らの利益向上なので、その結果が出るのは早くて半年後になると思います。
課題としては、配属先をあまり巻き込めていないこと。
市場調査の際は付き添ってくれましたが、理想は私がここを去ったとしてもプロジェクトを配属先主導で進められること。このために今月末予定の中間報告会にて活動をプレゼンするので、そこで配属先の上司&同僚に本プロジェクトをより理解してもらい、今まで以上に巻き込んでいけたらなと思っています。
最後に
ここまで走り続けながら考えて、途中でストップしそうになっても何とかまた走り出して、また考えて、といったかんじで試行錯誤しながら進めてきました。新たに2グループと同プロジェクトを進めようとしています。
最終ゴールである彼らの利益が向上は達成できると思います。というか最低でもそこは達成しなくちゃならない。
加えて思うのが、どこの世界もそうかもしれませんが、この世界って本当に絶対解がないんですよね。
彼らの貴重な時間と労力を使わせてしまっているこのプロジェクトが、本当に彼らにポジティブな影響を与えられているのか。
常に自問自答を繰り返しながらやっています。というよりむしろ、この業界に身を置くものであれば、どのレベルにいる人でも、この問いとは常に向き合いながらやるべきだと思っています。
任期も折り返し地点を迎え、残り1年です。
赴任してからの1年はとにかく突っ走ってきました。残り1年を実りあるものにできるよう、これからはしっかりと着実に活動していきたいと思います。
ではまた~☆
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綿貫大地
1983年生まれ。千葉県成田市出身。
大学在学中にザンビアで半年間ボランティアをするNGOのプログラムに参加。
埼玉大学経済学部卒業後、サセックス大学開発学研究所(IDS)で開発学修士号取得。
大手商用車メーカーにて3年半勤務したのち、大阪の化学メーカーに2年半勤務。
2017年10月から2019年9月まで西アフリカのベナンで、青年海外協力隊隊員として活動。
JICA SHEPプロジェクトを用い、野菜農家グループの収入向上に貢献。
2019年10月からベナンの飲食店経営に従事し、現在はベナンの農業関連会社の起業準備中。
”だれもが志を持って生ける世界の創造”というビジョンを胸に日々活動中。
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