こんにちは。
西アフリカのベナンで、JICA海外協力隊のコミュニティ開発という職種で活動しています、だいちです。
今回は久しぶりに活動報告をしたいと思います。長くなるので前後編に分けますね。
ここでは野菜農家グループと一緒にやっているSHEPアプローチについての紹介と、その上で意識していることについて書いていきます。
SHEPアプローチとの出会い
農業開発所(日本のJAのようなところ)に配属された私のメインターゲットは農家。しかし、私に農業の専門知識はありません。
赴任当初は、川上から川下までみて、収入向上に向けた具体案を農家さんと一緒に考え、実行していけたらな~と何となく思っていました。
そんな時に見つけたのがSHEPアプローチ。
きっかけはセネガル先輩隊員のFacebookの投稿でした。最初は興味本位でどういったアプローチか調べていたのですが、調べれば調べるうちに、自分の強みと最終ゴールの両方の観点から、自分にマッチしているなと感じました。
農業の専門知識はありませんが、日本の大企業と中小企業でさまざまな業務を経験し、グロービスでビジネス基礎を学び、協力隊活動後に現地で起業を考えている自分には、まさにこれだ!と思えました。
さらに、JICAのサイトにアップされている動画を見ていると知っている顔が!
なんと大学院時代の同期がこのプロジェクトの本部にいました! 早速連絡を取り、アドバイスをいただきました。
また、上記セネガル先輩隊員にもFacebookを通じて連絡を取り、セネガルで使用したフォーマットはプレゼン資料などを送っていただきました。
インプットを続けること&アンテナを常に張っておく事の大事さを痛感しましたね~
SHEPアプローチとは
Smallholder Horticulture Empowerment and Promotionとは、ケニア農業省とJICAで開発された小規模園芸農家支援のアプローチであり、野菜や果物といった園芸作物を生産する農家に対し、「作って売る」から「売るために作る」への意識変革を起こし、営農スキルや栽培スキル向上によって農家の園芸所得向上を目指すもの
この「作って売る」から「売るために作る」がこのアプローチの核となる部分だと思っていて、その意識変革を起こすための様々な打ち手があるのが、このアプローチの特徴です。
ケニアで始まり、大成功を収めたこのアプローチはアフリカで23ヵ国で実施されています。他にもアジアや中東、中南米でも採り入れられるなど全世界に広がりを見せています。

これがSHEPアプローチのコンセプトです。

上図のようにいろいろ書かれていますが、簡単にいうと次の2点に集約されると思います。
- 市場と生産者の情報を共有し、地域経済の効率化を図る
- Autonomy :自律性(自分たちがやる)・Competence: 有能感(自分たちにもできる)・Relatedness: 関係性(つながっている)という内発的なモチベーションを高めるための仕掛け
この2つを組み合わせることによって、核の部分である「作って売る」から「売るために作る」という形に近づけていきます
では、実際なにを?どうやるの?ということですが、主に4つのステップに分かれています。ここでは概要だけで、各項目の詳細は後編で紹介しますね。

- 参加型ベースライン調査:農家自身による現在の収支状況・保有資産を可視化し認識する
- 農家による市場調査:農家自身が、実際に市場に赴き、アンケートなどをすることにより、市場での情報を入手
- 対象作物と栽培時期の選定:上記2つの情報を踏まえた上で、農家自身が対象作物とその栽培時期を選定
- アクションプラン策定と実行:アクションプランを作成し、農業開発所や農業省の技術的アドバイスの元に栽培
意識していること
このアプローチを進めていく上で、全体を通じて意識していることがあります。
あくまでも自分はサポート役であるということを意識し、彼ら自身のプロジェクトであるということを何度も再認識してもらうことで自律性を促進
例えば、最初の農家グループ選定で、本部プロジェクトではプロポーザル方式というものを採用。各県の代表を説明会に招待し、その中から希望した県だけでプロジェクトを開始する。これを自分がそのままやることは難しい。この方式の大事な部分は、自分から手を挙げてくれた人たちをサポートすることで自律性を促すことだと理解している
そこで自分がやる際には、まず農家グループに説明し、1週間後にやりたいと意思表示してくれたグループと活動を始めるようにしている。さらに最近では意思表示だけでなく、紙にその旨を書いてもらうようにしている
*”コミットメントすること”&”それを書くことが持つ力”について詳しく知りたい方は下記書籍(影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか)がおすすめ
農家自身が記入するためのフォーマットも、オリジナルから修正や追記を繰り返し、その農家グループ全員が理解し、取り組みやすくなるような環境作りに励む。そうすることによって、会議当日は自分のシミレーション通りに進み、全メンバーに目を向ける余裕ができる
以上、全体として意識していることでした。実際にすべてがうまくいっているわけではないですが、メンバーの意識改革に成功し、最終ゴールまでの道のりを確実に進んでいます。
次回は、実際に一緒働いている農家グループの事例とそこで得た学びを中心に書いていきたいと思います。
では、また~☆
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綿貫大地
1983年生まれ。千葉県成田市出身。
大学在学中にザンビアで半年間ボランティアをするNGOのプログラムに参加。
埼玉大学経済学部卒業後、サセックス大学開発学研究所(IDS)で開発学修士号取得。
大手商用車メーカーにて3年半勤務したのち、大阪の化学メーカーに2年半勤務。
2017年10月から2019年9月まで西アフリカのベナンで、青年海外協力隊隊員として活動。
JICA SHEPプロジェクトを用い、野菜農家グループの収入向上に貢献。
2019年10月からベナンの飲食店経営に従事し、現在はベナンの農業関連会社の起業準備中。
”だれもが志を持って生ける世界の創造”というビジョンを胸に日々活動中。
大地頑張ってるね❗